社会教育士に会いに 第2回 足柄佑貴さん NEW

 社会教育士とは、社会教育主事講習の修了者や、大学・短期大学で社会教育主事養成課程を修了した人に与えられる「称号」です。令和2年に制度化されて以来、社会教育士は増え続けていて、令和6年度末時点の文科省発表では、全国に9,693人の社会教育士が誕生しています。
 福岡市でもたくさんの社会教育士がさまざまなフィールドで活躍しています。どのような人がどのような場所で何を思いながら活動しているのか、実際に会いに行ってきました。
 

第2回 足柄佑貴さん

足柄佑貴さん

 「まちの保健室『たねばこ』でコミュニティナースやってますのでいつでもお立ち寄りください」
 足柄さんからいただいたメッセージは、日本語として難しくはありませんが、聞き慣れない単語が2つ含まれていました。まちの保健室? コミュニティナース?
 検索すると「たねばこ」にはしっかりとしたSNS(note)がありましたので、同じ疑問を感じた読者の皆さまにはぜひそちらをご参照いただきたいですが、このテキストだけでもある程度概要をつかめるように少しだけ引用させていただきます。
 

「たねばこ」でできること、私たちがやりたいなと思っているのは、こんなこと。
・みんなのたまりば(おしゃべりや待ち合わせ、読書などご自由に)
・ちょっと休憩
・飲食(持ち込みどうぞ)
・たまに喫茶(パティシエ足柄の本領発揮)
・なんでも相談(個性的な看護師がいるよ)
・情報交換
・学びの場
・”たね”を育てる
開いている日は、コミュニティナースの小松と足柄がいます(たまに1人のときもあります)。体のこと、心のこと、育児や介護のこと、それ以外のことでもなんでも相談承ります。

まちの保健室(福岡/六本松)(2025年5月30日)「常設拠点「たねばこ」オープン!」(note)https://note.com/sgcnpj_rpm/n/n0b6c7754e81e(参照 2026年7月6日)
 

 なんとも、これは、民間による公民館?つまり公民間?? でも「保健室」でもあるようですし、とにかくボーダレスのにおいがぷんぷんします。直接話を聞いた方がいいと直感し、七隈線に乗り込みました。

まずはいろいろ聞いてみた

足柄さん in たねばこ

 六本松駅からほど近くに、たねばこはありました。校区でいうと笹丘小学校区です。開け放しのエントランスを「こんちは~」とくぐりますと、保健室というよりも、ここは図書室?

 笑顔で迎え入れてくれた足柄さんを質問攻めにします。

―――いきなりですが、「まちの保健室」ってなんですか?
足柄さん:六本松まちの保健室「たねばこ」は、本棚のある無料休憩所みたいな場所です。

―――確かにたくさんの本がありますね。この選書も足柄さんが…?
足柄さん:そうですね、最初に買ったものもありますが、大部分は自分の本を持ち込んでいます。自由に読みに来たり借りていったりしていいんですよ。とにかく、ふらっと立ち寄りやすくしたいなと思っています。

―――足柄さんはナースなのですか? ナースとコミュニティナースは違うのですか?
足柄さん:私は看護師・保健師の資格を持っているのでナースでもあるのですが、コミュニティナースはいわゆる「ナース」の資格とは関係なく、CNCという民間会社が提唱するコンセプトで、人と人のつながりを回復したり、やりたいことの実現を手伝ったり、相談を受け、関わる人を健康にすることを目的に活動します。私は「お節介を復活させよう」という考え方に共感して、コミュニティナースとしてここにいます。

―――めちゃくちゃ公共っぽいことを担っていらっしゃる感じがしますが、たねばこはどこが運営しているのですか?
成富さん:たねばこは西部ガスグループが運営しています。

―――??? どちらさまですか?
成富さん:はい、突然すみません、さっきから近くにいた西部ガスの成富です。西部ガスは、まちづくりの一環として、さざんぴあ博多や日の里団地(宗像市)でコミュニティナース活動の経験を積み重ねてきました。そして2025年6月3日、六本松に「たねばこ」を開設したのです。

―――ありがとうございます。そういうことだったんですね。成富さんもコミュニティナースなのですか?
成富さん:私はそうではありません。足柄さんと、今日はたまたま不在ですが小松さんという女性の二人が、うちのコミュニティナースです。

―――西部ガスにとって「たねばこ」やコミュニティナースはCSR(企業の社会的責任)という位置づけですか?
成富さん:いいえ、このことは「まちづくり」だと考え、進めています。地域に元気を与えられる存在でありたいという弊社の願いをかたちにしたものです。また、この場所が地域にお住いの皆さんとの接点になり、皆さんの声を弊社のサービスの創出や改善に活かすこともあると思います。地域の皆さんとともに、より良い暮らしやまちづくりにつなげていく取り組みにしていきたいと思います。

―――素晴らしい取り組みですね。

何足のわらじを履くのか足柄さん…社会教育士/コミュニティナース/看護師・保健師/パティシェ/etc., etc.

外に向かって貼り出されたコミュニティナースお二人の自己紹介

―――noteを拝見すると、足柄さんは社会教育士&コミュニティナースであるだけでなく、洋菓子屋さんとしてカヌレを焼いていた経歴をお持ちだったり、琵琶を弾いたり、種を集めたり、公園の草刈りをしたり、とにかく、活動の多彩さ、豊かさに目が留まります。
足柄さん:そうですね、心の向かうままにと言いますか。ただ、いまは、人のつながりを回復したり、人がやりたいことの実現を手伝ったりできるコミュニティナースとして活躍し、関わる人の心身の健康を支えたいなと思っています。

―――社会教育士であることは足柄さんの強みにつながっていますか。
足柄さん:カヌレ屋時代に「寺子屋をやりたいな」と考え、令和5年に九州大学で社会教育主事講習を受講しました。社会教育主事講習で学ぶことは、コミュニティナースのコンセプトと親和性が高いことはもちろんですが、保健師の活動内容とのつながりも深いと感じました。コミュニティナースとして、地域の子ども会とつながりをつくり、子ども会の活動をお年寄りに結び付けられたことなどは、社会教育を学んだからできたアプローチかなと思います。講習で学んだ、学習権、学びを通じた人と人とのつながりづくりなどの考え方は、自分の体に深く残っており、いまの活動を「これは社会に役立つことだ」と確信をもって実践できる支えになっています。

―――コミュニティナースとしてうれしかったことは?
足柄さん:お子さん連れのお母さんが「ここはママじゃなくていい場所だ」って言ってくれて、あれはうれしかったなあ。とにかくいろんな人に立ち寄ってほしいなと思っています。だれかの「やりたい」を応援することでみんなが健康になる。その一部になれたらいいですね。

そのドアを開くのはあなた

「フリーけん玉」でたわむれるボーダレスな足柄さん

 とにかく、足柄さんの全容をつかみたいと思っていろいろ聞いてみましたが、聞けば聞くほどスケールの大きさに圧倒されてしまいました。
 「たねばこ」には用事がなくても入ってきていいそうですよ。表にはフリーけん玉が置いてあり、手書きの「おいしいインスタントコーヒーあります」というなんか笑っちゃう看板も。定期的にイベントも開催しています。本を読みたい、血圧を測りたい(なにせ足柄さんは看護師でもあります)、ちょっとこの話聞いてよ(すべらない話じゃなくてもいいそうです)。足柄さんの話を聞かせて、って入ってみるのもいいかも。その一歩が、思いがけない「次の扉」につながっているかもしれません。
 

レポート:福岡市役所/市民局/生涯学習課/主任社会教育主事 永田