南区人権講座 ワークショップ みえない世界を知ろう 〜触れて感じる彫刻の世界〜 NEW

参加講座:みなみな交流カフェ(南区人権講座)ワークショップ みえない世界を知ろう 〜触れて感じる彫刻の世界〜

講師:片山博詞さん(彫刻家)

日時:2026年7月9日(木)13:00~15:00

主催:福岡市立南市民センター

共催:福岡市南区役所

会場:福岡市立南市民センター

キーワード:人権、視覚、触覚、彫刻

レポート筆者:福岡市役所/市民局/生涯学習課/主任社会教育主事 永田

 


 

見えない中で見たこと

 文字通り「ベールに包まれた」彫刻作品が並ぶ部屋に集合し、目隠しをした後、ベールを解かれた彫刻を手触りで鑑賞する―――。今回の「みなみな交流カフェ」は、そんな得難い体験の場でした。

 講師は彫刻家の片山博詞さんです。直方駅前の「大関魁皇」像の作者でいらっしゃいます。

元・福岡市立中学校の美術教師で、校長先生も務められました。

 片山さんはまず、彫刻家ならではの視点で「視覚のあいまいさ」について話をしてくださいました。曰く、制作中の彫刻の後ろに回って目を閉じて触ってみると微妙な「ずれ」が分かるのだそうです。

片山さん「今日は12体の作品を用意しました。皆さんが目隠しをしたらベールを外すので、触って鑑賞してください」(写真提供=南市民センター)
片山さん「形の違いだけでなく、素材も石やブロンズ、樹脂などバリエーションがありますので、その辺りも手で楽しんでみてください。」(写真提供=南区生涯学習推進課)

 片山さんの彫刻は「触っていい」ことに特徴があります。南市民センターには2体の像がありますが、どちらもだれでも触ることができるのです。


 ただ、今日は、どんなものかわからない作品を触りますから、勝手は全然違います。

 参加者は4人ずつのチームになって、目隠しをしました。前の人の肩に手を置き、スタッフの案内で最初の彫刻の前に移動します(見えない中で歩くのがとても怖い!)。そして、どうぞの合図でおそるおそる前に手を出しました。彫刻(であろうもの)の、冷たく硬質な感触が手に伝わります。

 最初は本当に触るだけで精いっぱいです。スタッフに促されて、4人とも作品の360度全体を触れるよう回り込むように少しずつ動きます。人の顔みたい。髪型は、角…? スカートを履いている?そんな言葉が口々に出てきました。手で触れた輪郭や髪の流れなどから、作品の姿が少しずつ、頭の中に「像」となって立ち上がってきます。

なにこの唐突なでっぱり…? (女性の服から飛び出ているもの。答えは、片山さんがよくモチーフに使われる林檎です)(写真提供=南区生涯学習推進課)

 片山さんの合図で、次の作品、また次の作品、と移動して鑑賞しました。専門知識はなく、なんの石かはわかりませんが、確かに質感が違う作品がありました。温度や大きさ、なんとなくの硬さの違い、丸みや角ばり方。すべての作品に個性があります。モチーフは、女の子のように分かりやすいものもあれば、太陽かな、月かな、これは巨大なそら豆…?とよくわからないものもありました。

 

 

小さな作品もありました。遠慮してたら鑑賞できません!(写真提供=南区生涯学習推進課)

 やがて合図があって目隠しを外し、今度は目と手で作品を鑑賞します。

 そもそも彫刻作品を触るという経験がほとんどない上に、それを手だけで鑑賞するという体験は、おそらくほとんどの参加者にとって初めてのことだったと思います。集中して鑑賞した結果、頭の中に浮かんだ「像」と目の前の彫刻作品がよく似ていたものもありました。周囲の反応を見ても、多くの方が同様に感じていたことと思います。

 一方で、手から得た「像」と実際が異なるものもありました。違った部分を目で見ながら改めて触ってみると、見えない時は「当てよう」と意識しすぎていたのかもしれないなと感じました。

 

 片山さんは、「正しい認識も大切だが、それ以上に豊かな認識を持ってほしい」と私たちに語り掛けました。

 見えない中で、見よう、正解しようと躍起になってしまったからこそ、「豊かな認識」という言葉が沁みました。また同じことを体験できるものなら、今度こそ、正解にとらわれずに作品を楽しみたいと思いましたし、彫刻鑑賞にとどまらず、人と接するとき、日常生活の中でも、この体験を思い出しながら「豊かな認識」を意識したいと思いました。

 目隠しをすることで認識の領域が深まった(深めようと意識し始めた)という体験でした。